レジで4歳が「いしいってかいてある」と言った日|子連れの買い出しが重い本当の理由
家族みんなで買い物に行くと、レジに着くころには、夫婦の会話が減っている。
「これ、いる?」
「うん」
必要なことだけを、短く言い合う。
べつに、ケンカをしたわけじゃない。
でも、カゴは重くなり、子どもは走り回り、店内は寒く、時間だけが過ぎていく。
そうやって余裕が削られていくと、人は無口になる。
早くレジを抜けて、荷物を車に積んで、この時間を終わらせたい。
ようやくレジに並んだ、タイミング。
4歳の長男が、突然、大きな声を出した。
子連れの買い出しは、地味に重労働
卵、牛乳、野菜、ストック品。
カゴに入れるたびに、レジ後の運搬が重くなっていくのがわかる。
しかも夏のスーパーは、クーラーが効きすぎている。
子どもたちが冷えていないか、気を配る。上着を着せて、また脱ぎたがって、を繰り返す。
そのあいだも、子どもたちはあっちに行き、こっちで走り、勝手にお菓子を持ってくる。
ぼくも妻も、じわじわとイライラが溜まっていた。
レジで4歳が言った一言
「いしい、ってかいてある!!」
レジに並んだ瞬間、長男が大きな声でそう言った。
(ん?)
一瞬、なんのことかわからなかった。
視線をたどると、レジの女性の名札。
そこに、ひらがなで「いしい」と書いてあった。
うちの名字です。笑
長男は最近ひらがなを覚えたばかりで、読める文字を見つけるたびに報告してくれる。その延長で、たまたま見つけたのが、自分の名字だった。
すると、レジの女性が気を遣ってか、話しかけてくれた。
「一緒なの?」
「さいきん、ひらがなを、おぼえたばっかりで」
「あら、そうなの〜」
なんてことのない会話。
でも、その数秒で、ぼくの気持ちは、ふっとほどけた。
子どもの一言が、場の空気を変える
さっきまで、荷物が重くて、寒さが気になって、子どもは走り回って、夫婦の会話は最低限になっていた。
それが、あの一言と、店員さんとの数往復の会話で、一気に緩んだ。
長男には、空気を変えるつもりが1ミリもなかった。
そこには、気配りも、狙いも、計算もない。
これは、大人には絶対にできないこと。
でも子どもの一言は、まっすぐだから、まっすぐ届く。意図がないぶん、こっちの構えも解ける。
子連れの買い物でイライラする本当の理由
あのとき、ぼくをイライラさせていたのは、荷物の重さじゃない。寒さでも、子どもが走り回ることでもない。
余裕がなくなっていたこと、そのものだ。
だって、荷物の重さは、あの一言の前後で1グラムも変わっていない。子どもも相変わらず走り回っていた。
変わったのは、こっちの心の余白だけ。
しんどさの感じ方は、ちょっとしたことで変えることができる。そのスイッチを、4歳が勝手に押してくれた。
大人と子どもでは、見えているものが違う
この日、名札の「いしい」に気づいたのは、家族で長男だけ。ぼくも妻も、まったく見ていなかった。
大人は、レジで「早く終わってくれ」しか考えていない。
でも子どもは、そこに文字を見つけて、自分の名字と同じだと発見して、興奮していた。
同じ場所にいても、見えているものが全然違う。
もう少し顔を上げて、周りを見る余裕があったら、大人にも見つけられるものがあるかもしれない。
買い出しは、これからも重い。夏のスーパーは、これからも寒い。
でも、たまにこういう数秒がある。
イライラしたとき、何があれば気持ちがほどけますか?
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